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大阪高等裁判所 昭和33年(く)26号 決定 1958年7月04日

少年 H(昭和一五・七・五生)

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の趣意は原裁判所は少年に対し、強姦致傷及び暴行の非行事実を認定した上、少年を中等少年院に送致する旨の決定をしたが右強姦致傷の事実については、少年は直接その暴行に関与してもおらず、且つ自ら強姦をしようという意思もなかつた。唯当日Eに誘われて○○市××公園に遊びに行つた際、F、Gの両名が来ていて、強姦の話をしているのを聞いたが、その相談に預つた訳でもなく、その内アベックが見つかりEが少年に対し男の方を連れて行けと言つたので、○○駅まで送つてやつただけで、その間にE等が女の方を強姦したことを後に聞き知つたものである。従つて少年に対して強姦致傷の非行事実を認定した原決定は重大な事実の誤認を犯したものであり、且つその認定事実に基いてした処分も著しく不当であるというのである。よつて調査するに、原裁判所が少年に対し強姦致傷及び暴行の非行事実を認定した上、少年を中等少年院に送致する旨の決定をしたことは、原決定自体によつて明らかである。そして記録によると、少年はF、E等がアベックを襲い、その男と女を引離した上女を強姦しようとする意図のあることを知り、同人等と共にその対象となるアベックを探し求め、偶々○○高等学校運動場附近をKと散歩していた被害者Lを発見するや、右F、E等と意思相通じ、同女を強姦しようと企て、Kをその場から連れ去つて両名を引離し、F、Eの両名において同女を更に同校舎北方の柿畑に連行した上、同女をその場に押し倒しその手足口等を押える等の暴行をしてその抵抗を抑圧し、順次同女に乗りかかつて強いて姦淫し、右姦淫により同女に対し全治約一〇日を要する処女膜破瓜、部内出血の傷害を負わせた事実を認めることができる。してみると、なるほど少年は強姦の実行行為には直接関与していないけれども、これはF、E等が被害者を予期しない他の場所に連行して姦淫したためこれに関与し得なかつたものであつて、必ずしも少年に姦淫をしようという意図がなかつたものとは為し得ないのみならず、仮りに自ら姦淫しようという意思がなかつたとしても、F、E等に強姦の意図のあることを知り、同人等と意思相通じ、その目的遂行のため重要な行為に参与したものであるから同人等の実行した強姦致傷の行為について共同正犯としての責任を免れないものであり、記録を精査して検討しても原決定に重大な事実の誤認あることを発見できない。又本件非行の態様、少年の性格、環境、非行歴等記録にあらわれた諸般の情況に徴すると、少年に対してはその性格を矯正しその補導を適正ならしめるためには施設に収容する措置も又己むを得ないものと考えられるのであつて、原決定の処分が著しく不当のものとも思われない。結局原決定は正当であり、本件抗告は理由がないから、少年法第三三条第一項に従い主文のとおり決定する。

(裁判長判事 吉田正雄 判事 竹中義郎 判事 井上清一郎)

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